か ま ぼ こ の 効 用
第1章 見直される“かまぼこ” | 第2章 “かまぼこ”をもっと知ろう | 第3章 栄養たっぷりの“かまぼこ” | 第4章 “かまぼこ”で健康になる

第2章 “かまぼこ”をもっと知ろう

・かまぼこのルーツを探る
・板付きかまぼこの起こり
・ナマズからスケトウタラまで
・日本中にある“かまぼこ”
・かまぼこができるまで
・歯ごたえを決める「足」
・白さの秘密
●切り方で活かす

かまぼこのルーツを探る - Back to TOP -

 正月のおせち料理に使われる紅白のかまぼこを始め、日本人の食生活には大変なじみの深いかまぼこですが、歴史は古く、1115年に記された『類聚雑要抄』にその最初の記述をみることができます。祝宴にかまぼこがだされたことが載っていて、すでにこの頃には、かまぼこが人々の膳に供されていたことがわかります。ただし、形は今のものとは違っていました。
 その4世紀ほど後に記された室町時代の『宗吾大双紙』をひも解くと、「かまぼこはナマズ本也、蒲の穂に似せたなり」と書かれています。蒲というのは川べりや湖沼にはえる植物で、細くのびた茎の先に25センチほどの褐色の穂をつけます。かまぼこの名はここからきています。蒲の穂の形によく似ているところから、「ガマノホ(蒲の穂)」が転じて「かまぼこ(蒲鉾)」になったとされます。
 現在でいう竹輪とよく似た形だったのです。また作り方も、魚肉に塩を混ぜて練り、それを細い竹に塗って焼いただけの、今の竹輪と変わらないものでした。ところで、現在の竹輪や板付きかまぼこは日本で生まれた独自の食品といえます。しかし、その他のかまぼこについてははっきりしたことはわかっていません。というのも東南アジアの国々には、日本の「さつま揚げ」に似たかまぼこがあったり、中国には「魚団」といって、炒めて食べるかまぼこの一種があったりするからです。
 かまぼこのルーツは明確ではないわけですが、長い歴史を経た今でも人々に愛され、食されていることだけは昔も今も変わりありません。


板付きかまぼこの起こり - Back to TOP -

かまぼこと聞くと、多くの人が真っ先に板に付いたものを思い浮かべがちですが、前述したように最初は今の竹輪に似た形をしていました。その後、板付きかまぼこが登場し、それにとって代わるのですが、ではいつ頃から板付きかまぼこは作られるようになったのでしょうか。『摂戦実録大全・巻一』(1752年)という書物の中に、その手がかりを見つけることができます。豊臣秀頼が伏見から大阪に戻る際、調理人に命じて板付きかまぼこを作らせたという記述があるからです。また、そのときの作り方は、その約一世紀後、に書かれた『及瓜漫筆』という書物の中で説明されています。「魚どもを取りよせ、大勢よりて、ひたとおろし、骨をさりて、大きな臼を二ツ三ツ立ならべて、おろしたる肉を入れ、杵をもってければ、即時にかまぼこになりけるを板に付け、庭の中に長く掘り、炭の火を卓散におこし、畳を左右に立ならべ、かまぼこを段々に指て炙り・・・・・・」。まぎれもなくこれは板付きかまぼこの作り方です。ただし、当時は表面を焼いた焼抜きかまぼこであって現在主流の蒸しかまぼこではなかったことがこの一文からもわかります。この点については江戸時代後期につくられた『嬉遊笑覧』の中にも明記されていて、「昔は蒲鉾はゆでることなく焼きたるものなり」とあります。今と違って昔は焼抜きかまぼこが中心だったのです。いづれにしても板付き蒲鉾は安土桃山時代の末期には登場していたことになります。では、かまぼこの起こりとなつた竹輪のほうはその後どうなったのでしょうか。『近世事物考 』という書物には、「後に板に付けたるが出来てより、まぎらわしきにもとの蒲鉾は竹輪と名づけたり」とあります。板付きかまぼこが登場してからはこちらを「かまぼこ」と呼び、かつての「かまぼこ」は竹輪と呼んで区別されるようになったのです。


ナマズからスケトウタラまで - Back to TOP -

かまぼこが魚のすり身からできていることは多くの方がご存じでしょうが、では、何の魚からつくられているのか、おわかりですか。現在かまぼこづくりに使用されている魚は主にスケトウタラです。北洋漁業でとれるこの魚の冷凍すり身が使われます。ただし、昔からそうだつたわけではありません。むしろ、古来よりいろいろな魚が使われ、今はスケトウタラがその中心になっている、といったほうがあたっています。では最初に使用された魚は何だつたのでしょうか。それはナマズでした。先の『宗吾大双紙』にナマズが使われたことが明記されています。ただし、味の点では必ずしもおいしくはなかったようで、江戸前期に書かれた『本朝食鑑』 には、ナマズはかまぼこの材料魚としては下品であると酷評されています。江戸時代に入ると、原材料としてハモが登場します。ハモは関東ではなじみの薄い魚ですが、関西、特に京都では現在では珍重されています。アナゴやウナギによく似た姿をした海水魚で、かまぼこづくりの最高の材料とされました。明治以降になると、トロール漁が盛んになり、それにつれてかまぼこの主材料もこの漁でとれるキダイ、グチ、ムツ、エソなどに移ります。ところが、昭和の中期頃からこれらの漁獲高が急減し、トロール漁そのものもすたれたため、かまぼこ業界では原材料の転換を余儀なくされ、その結果、注目されてたのが北洋漁業です。ここでとれるスケトウタラに関心が集まり、その冷凍すり身がかまぼこの主材料として十分可能と判断され、使用されるようになりました。そうして今日に至るのです。このように今でもかまぼこの材料はスケトウタラ、グチ、エソですが、最近はそれにタイ、ハモ、イトヨリなどの、いわゆる美味な魚のすり身が加えられたのも市販され、その名がパッケージにも表示されて購買意欲を高めています。


日本中にある“かまぼこ” - Back to TOP -

かまぼこは日本全国でつくられており、使用する魚や製造方法の違いによって、独自の味、色、形をつくりだしています。代表的なものを挙げてみましょう。日本を東西に分け、まず東の方では、東北地方の「゛たん焼きちくわ」、仙台の「笹かまぼこ」、新潟の「新潟かまぼこ」、富士地方の「こんぶ巻き」、敦賀地方の「ミリン焼きかまぼこ」、東京の「はんぺん」「伊達巻き」、小田原の「蒸しかまぼこ」、焼津の「なると巻き」、豊橋の「豊橋竹輪」など。西のほうでは、大阪地方の「焼き板かまぼこ」、京都の「魚そうめん」、三重の「ハモ竹輪」、和歌山の「なんば焼き」、中国地方と瀬戸内海沿岸の「簀巻きかまぼこ」、山口地方の「白焼きかまぼこ」、宇和島の「じゃこ天」、鹿児島地方の「つけ揚げ」などがよく知られます。この他、全国的に作られている物に「さつま揚げ」、イワシのすり身でつくる「つみれ」、イカやゴボウを中にはさんだ「いか巻き」「ごぼう巻き」、野菜の入った「野菜天」、さらに近年アイデア商品として人気のある「カニ風味かまぼこ」「チーズかまぼこ」などがあり、さまざまなかまぼこが市場に登場しています。なお、「さつま揚げ」は関西では「天ぷら」と呼ばれ、呼称にも地方によって違いが見られます。また、関東のかまぼこと関西のかまぼこにも基本的な違いがあります。一つは関東のものは蒸し板が中心であるのに対し、関西のものは焼き板が主流である点です。また関東のかまぼこはこりこりとした弾力に特徴があるのに対し、関西のものはなにより味に重点が置かれ、そのためうま味をだすのに原材料にハモが加えられることです。


かまぼこができるまで - Back to TOP -

かまぼこはいくつかの工程を経てつくられます。原料 → 採肉 → 水さらし → 脱水 → 擂潰 → 成形 → 蒸す、焼く、油で揚げる、ゆでるなど→冷却→包装。原料の魚を採肉機という機械に入れてすり身にし(採肉)、それを水をはった容器につけて、浮き上がった脂を取り除きます(水さらし)。脱水機で水を除去した後(脱水)、擂潰の作業に移ります。擂潰とは一言でいえば塩ずりのことです。すり身に食塩を加え、すり込むことによって粘りを生じさせます。この時使用される塩の量ですが、市販されているかまぼこを調査したところ、平均で100グラム中2グラム、水分の多いかまぼこだともっと低くなります。また、の工程では途中でみりん、砂糖などの調味料が加えられます。その量はメーカーによって異なります。こうして十分粘りがでたら、次に形を整える作業(成形)に入ります。つまり、板に盛りつけたり、丸や四角の形にするなどして、姿を整えるわけです。そのあと蒸しかまぼこであれば蒸し、焼き抜きかまぼこであれば焼き、揚げかまぼこであれば油で揚げるなど、それぞれの作業を行います。それが完了したらすばやく冷却し、あとは包装へと回されます。かまぼこづくりの数ある工程のうち重要とされるのは「一に買い出し、二にすり、三に蒸し」と昔からいわれ、これらがかまぼこの出来の良し悪しを左右するといっても過言ではありません。もちろん焼きかまぼこであれば「蒸し」ではなく「焼き」が、揚げかまぼこであれば「揚げ」が重要になります。


歯ごたえを決める「足」 - Back to TOP -

かまぼこの大きな特徴といえば、あのプリプリとした歯ごたえでしょう。つまり弾力のことですが、かまぼこ特有のこの弾力を別名「足」といいます。そこで弾力のあるかまぼこのことを「足が強い」と表現し、反対に弾力が乏しいと「足が弱い」といって区別します。ただし、足が強いといっても、単に弾力が優りさえすればいいというものではありません。腰があって、しかもソフトな歯ごたえを残すものであることが大事です。そのようなかまぼここそ本当の意味での「足の強い」かまぼこといえるのです。では「足」はどのようにしてつくられるのでしょうか。それは魚肉の持つタンパク質と密接に関係しています。タンパク質魚肉の筋肉をつくっている重要な成分です。魚肉にしろ牛肉や豚肉にしろ、肉を絞ると肉汁がでてきますが、そのあとには筋肉繊維のタンパク質が残ります。これは真水で洗っても溶け出しませんが、食塩を約3パーセント加えてすりつぶすと溶けだしてネバネバした糊状になるのです。このネバネバしたものが互いに結合して網目をつくり、加熱するとかたまって弾力、つまり「足」をつくりだすのです。ところで、かまぼこづくりに食塩が使用されると聞くと、中には、それは塩味をつけるためだろうと考える方がいらっしゃいます。しかし、そうではありません。あくまでも魚肉の持つタンパク質を溶かし出すためなのです。れによって「足」が生じ、あのプリプリとした独特の歯ごたえが生まれるのです。これは水では不可能で塩で初めて可能なのです。そこで使用されます。


白さの秘密 - Back to TOP -

おせち料理の中に紅白のかまぼこが互い違いに並んでいる様子はあでやかで、伝統美すら感じさせますが、その美しさを作り出しているかまぼこの白さに違った見方をする人もいるようです。「あんなに白いのはおかしい。添加物を使っているのではないだろうか」と。しかし、かまぼこの持つ白さは添加物によってわざと作り出された物ではありません。ごく自然に生まれた物なのです。その秘密は白身の魚を使用することにあります。白身の魚を使えば、当然白いかまぼこができあがります。ただしそれだけではありません。かまぼこづくりで「水さらし」という工程を踏む際、ここですり身をよくみずにさらすことにも秘密があります。さらすことでいっそう白さが増すのです。では、スケトウタラのような白身の魚を使用しないかまぼこの場合はどうでしょうか。近年人気が高まっているイワシ、アジ、サバなど、いわゆる赤身の魚を使ったものであれば、黒っぽい色のかまぼこができあがります。このように使用する魚の身によって白くなったり、そうでなかったりするのです。食品添加物に対して敏感であるのはいいことですが、しかし過剰に反応するのは考えものです。もしかまぼこの白さに疑問をもっていたならば、そうでないことがこれでおわかりいただけた事と思います。


●切り方で活かす - Back to TOP -

特に蒸し板かまぼこの場合、切り方ひとつでいろいろな形をつくりだすことができ、料理に添えた時、華やかさが増します。たとえば「バラ」という飾り切りは文字通りバラの花の形にしたもの。「結び切り」は結んだ姿にしたもので、お吸い物などに重宝します。「蘭」は、花びらの形に似せたもので、オードブルなどに最適です。作り方は次の通りです 「バラ」 2ミリ幅に薄切りにしたかまぼこをバラ1輪につき2〜3枚用意。1枚ず つずらして並べ、手前から巻く。ほどけないように最後に爪楊枝を刺す。 「結びきり」 かまぼこを3〜4ミリの厚さに切り、両端の端が同じになるように気をつけながら、互い違いに切り込みを入れる。真ん中に切目を入れ、両端の2本を上と下から通し、結んで形を整える。 「蘭」 かまぼこに3ミリ幅の切り込みを4本、同じ深さになるように入れる。両端を残し真ん中の3枚をそれぞれ折り曲げて内に入れ、花びらに形づくる。